Project 01

本町サンケイビル

求められたコロナ対応
竣工間近の最新鋭オフィスビルを
さらに進化させた半年間の闘い

2020年春、世界は突然コロナ禍に襲われた。日本でも4月には緊急事態宣言が発せられ、多くの企業が在宅勤務へと切り替えた。「ニューノーマル」の流れが一気に進む中、大阪を代表するビジネス街で“新時代のオフィスビル”の建築に着手していたサンケイビルにも、その回答が求められた。しかし建物はすでに着工して半年が経過している。何ができるのか、何をすべきなのか――かつてない規模での着工後の設計変更に宮内貴大が挑んだ。

関西営業部 チーフ

宮内 貴大

2014年入社
経営学部 卒業

PROFILE

就職活動では最初から不動産業界に絞っていた。サンケイビルが多彩なアセットに挑戦している姿に惹かれて入社。ビル営業部でオフィスや商業のリーシング、テナント運営管理業務を経験した後、関西営業部に異動し、現在は開発業務を推進している。関西勤務になって始めた海釣りにハマり船舶免許まで取得するも、使用機会はいまだ無し。

関西オフィスの中心街に
絶好の土地を取得

大阪のビジネス街の中心地で2018年9月に取得した800坪の土地――それが、後に「本町サンケイビル」として、西日本エリアでも最新鋭オフィスビル誕生の始まりだった。その土地は、Osaka Metro御堂筋線・中央線・四つ橋線の3路線が交差する「本町」駅徒歩1分の場所にあり、大阪の大動脈である「御堂筋」にも近い。当然、検討する会社は多くいた。インバウンド全盛でホテルを企画するデベロッパーがほとんどという中、サンケイビルはこの土地こそ関西経済の躍進を牽引する先進オフィスビルの候補地にふさわしいと主張。売主の共感を得て取得に成功したのだった。
すぐにプロジェクトチームが組まれた。そして、ハイグレードなミッドサイズオフィスビル「S-GATE」シリーズのコンセプトを継承し、本町エリアの新たなランドマークにふさわしいオフィスビルにするために、コンセプトの作成や基本設計、建設会社の選定が進んだ。2019年11月の着工に向けて基本設計を詰める作業が本格化する2019年4月、東京から宮内が関西営業部に着任、このプロジェクトを担うことになった。

サンケイの名前を冠した
新しい時代のオフィスビルに

定例の検討会で設計の詳細が議論されていく。宮内にとって開発推進は未知の世界だ。建設会社や設計事務所のメンバーが話す内容を理解するだけでも大変だった。しかし、入居するテナントが何を求めているか、これまでのリーシング業務の経験から肌感覚でわかった。それについては積極的に意見を出した。
まもなく本町サンケイビルのコンセプトが決定する。それは「S-GATEシリーズ」の「走り続ける企業に、エネルギーと安らぎを。」というブランドビジョンを受け継ぎ、オフィスワーカーの憩いの場となるようなパブリックスペースを備えると共に、街の賑わいの核となることを目指すものとされた。さらに、最先端の制震構造や異系統2回線受電などによるBCP対策を備えるほか、CASBEEスマートウェルネスオフィスSランク取得や、省CO2先導型 サステナブル建築物等先導事業認定も受けるなど、新時代のオフィスビルにふさわしい仕様となった。これこそ最新鋭だ、と宮内も胸を張りたい気持ちだった。予定通り2019年11月に着工し工事は順調に進み始めた。ところが年が明け春を迎えようとする頃、思ってもいなかったコロナ禍が世界を襲った。

上司から

関西営業部 課長

金杉 憲治

開発推進の経験がないということで、本人は当初、どう関わっていいか戸惑ったようでした。しかし、開発の経験を期待して呼んだのではありません。わからないことは聞けばいい、いままでの商業担当やリーシング営業で学んだエンドユーザーの視点を活かして、間違いを恐れず、受身にならず、積極的に発言してほしいと伝えました。いきなり「本町サンケイビル」という大きなプロジェクトに入り、しかもコロナ禍に翻弄される中で、よく頑張ってくれたと思います。これからも、積極的に自分の意見、考えを社内外へ発信して1人のデベロッパー社員として大きく成長していってほしいと思います。

「このままでいいのか?」
という更なる課題

4月、日本全国に緊急事態宣言が出された。できるだけ家にとどまることが求められ、各企業は一斉にテレワークへと舵を切った。本町サンケイビルの工事は継続か中断か、継続するにしても、人は集まるのか、その感染対策はどうするか、資材・設備は予定通り入るのか……。工事進捗に関わる問題が、次々と押し寄せた。それだけではなかった。感染症が蔓延する状況下で、現状の仕様のままでいいのか、再考したほうがよいのではないかと役員から指示があったのだ。宮内は意外に思った。指示があるとすれば、それは「工期は守れ、竣工日は遅らせるな」というものだと思っていたからだ。それを、工期やコストにも直ちに跳ね返る仕様の再検討をトップ自らが指示している。「驚きました。『金はなんとかする。気にするな』」という指示もありました。すごい会社だと思いました。でも、それがサンケイビルらしさなんだと、改めて気付いてうれしかったですね。」
すぐに設計事務所、建設会社と共同で「コロナ対策分科会」が組織され、チームとして連日の検討が始まった。

変化を恐れず、時代の先を歩め――
改めて知った
サンケイビルのマインド

コロナ禍が一過性のものでないことは、誰の目にも明らかだった。時代は「ニューノーマル」と形容され、新しい働き方の中で、オフィスビルの在り方も改めて問われていた。分科会は新仕様、新企画を練り上げていく。「それは工期に影響するのではないか」と懸念が残る案もいくつかあったが、納得できる着地点を探りながら可能な限りの変更・追加を進めていった。完全非接触のエレベーター、扉の自動開閉化、換気システムや自然給気スリットの追加、屋上テラス、エントランスロビーの「モーション・グリーン・ウォール」……次々と決まり、図面が描かれていく。
「本町サンケイビル」は改善に改善を重ねながらも予定通りに竣工した。内覧会に訪れた不動産関係者は「よくこれだけのものを組み込みましたね」と驚きを隠さなかった。
「竣工の時は、涙が出そうでした」と宮内は振り返る。「実は『ニューノーマル』『withコロナの時代』といっても、これからどんな働き方になっていくのか、それを見通すことは非常に難しかった。そもそもコロナ禍がいつまで続きどこに着地していくのか、それは世界中の誰にもわからないことでしたからね。その中で、懸命に想像力を働かせて、どんな社会になっていくのか、どんな仕事環境であったらそこで働く人たちが快適で安心できるのかを考え、工期もにらみながら、一つひとつ具体化していきました。」
まさか最初に担当した開発推進がこんなに大変になるとは思わなかったという宮内だが、今は担当できたことに感謝しているという。「最大の学びは、“時代を見て、その先を歩め。変化を恐れるな”というサンケイビルの姿勢でした。これからの私のデベロッパー人生に、しっかりと貫いていきたいと思っています。」
初めての開発現場で、宮内が手にしたものは大きかった。

(2021年11月インタビュー)

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